義務化が始まったHACCPについて
2018年6月に可決された食品衛生法の改正によって、食品を取り扱うすべての事業者はHACCPによる衛生管理を行うことが義務化されました。1年間の猶予期間を経て2021年6月には完全制度化が始まることになっています。HACCPは食品衛生の管理を見える化する手法であり、食品の安全を脅かす異物や菌などの混入するリスクを作業工程の分析と整理をすることで見い出し、工程管理からそのリスクを取り除こうとする考え方であります。ここで行われる危害分析や重要管理点などの行為を意味する英単語の頭文字をつないで、HACCPという言葉が生まれました。
作業工程を7つの原則と12の手順に基づいて管理基準を定めて、これらが正しく機能しているのかをチェックと記録を行い、不備があれば訂正や修正を行って衛生水準を継続的に維持向上させます。アポロ計画などの宇宙開発事業が盛んに行われていた1960年代のアメリカでは、宇宙飛行士の宇宙船内での食事の安全性の確保が急務となり、HACCPによる食品衛生管理が提唱され国際基準にまでなります。これが世界中に広まり、わが国においても同様に食の安全の確保の観点から義務化の法整備が実現しました。食品衛生法で定められた営業許可が必要な34の業種だけでなく、許可の必要がない業種であっても導入が必要です。
ただし、細部にわたる管理を常時行うことが難しいであろう小規模な事業者に対しては、可能な範囲で衛生管理を行うことが認められています。しかしながら、必要とされる項目の実行は割愛することができませんので注意が必要です。改正食品衛生法では明確な罰則が規定されていませんが、都道府県で独自に定めた規定がある場合は導入しないことにより罰則の対象となることがあります。営業許可の取得や更新時に導入や実施状況のチェックが予想されますので、食の安全の確保のためにも着手が急務であることは間違いありません。